学生寮の歴史を知る

日本における学生寮の始まり

日本における学生寮の歴史は、明治の時代に始まっています。
明治時代には教育制度や学校制度が改革されていって、さまざまな変化が生じました。
その中で、現在の大学に当たる旧制高等学校が1886年に発足します。

その後1890年になると旧制第一高等学校の学長が、今の東大駒場寮になる場所に自治寮の設置を認めます。
これは、学生が自分たちで生活しさまざまな活動を自主的に行えるようにしたもので、学校による管理を緩めて学生の自治を促すものとなりました。

この旧制第一高等学校の自治寮が、日本の学生寮のスタートと言えるでしょう。
その後、全国にあった別の旧制高等学校でも似たような寮ができるようになります。
さらに私立の学校にも全国から学生が来るようになりましたので、やはり寮を設置する動きが強まりました。

こうした流れの中で、学校自体が寮を設置するだけでなく、独自に作られた寮も次第に増えてきます。
同じ地方のOBや有志が都市部の大学に無理なく通えるようにということで、費用面でもメリットのある寮を作っていったのです。
そして、学生寮の中で独自のつながりや文化、思想が生まれていくことになります。
それが学生運動に大きなきっかけを与えることにもなります。

戦後の学生寮の状況

戦前から学生寮は学生運動に大きな影響をもたらす場となっていましたが、戦後にはその傾向が強くなります。
大戦中は思想の締め付けによって学生運動は事実上壊滅させられましたが、戦後になると全学連が作られ再び活発になります。
1960年の安保条約改定に関係した反対運動、つまり安保闘争が起こると、学生たちが決起して活動をし始めます。
その拠点となったのが学生寮なのです。

政府に対抗する形での学生運動の場となっただけでなく、異なる学生運動グループの間でも争いが激化していきます。
こうして戦後は学生寮が非常に不穏な場所と見なされるようになり、学生運動から距離を置いていた学生たちは学生寮からも離れるようになってしまったのです。

時代の変化による寮離れと学生寮への回帰

こうした事情と共に、時代が下るとよりプライベートを重んじた住まいに学生が住むようになります。
学生専用マンションが次々と建設されましたし、一般向けのワンルーム集合住宅にも学生が住み始めます。
こうして学生寮離れが急速に進んでいきます。

しかし、日本大学のグローバル化が進むと状況が変化します。
外国人留学生が寮に住むことで、寮のニーズが増していったのです。
同時に、時代に合わせて快適な部屋の作りやプライベートを重視したルール設定などにより、日本人学生も寮に戻ってくるようになりました。
こうして学生寮は、時代によってさまざまな変化を遂げてきたのです。